寒(かん)は足もとより生ず

自然界の気候の特徴・六気である風、寒、暑、湿、燥、火は、大自然界に存在する異なる六種類の気候変化に属するとされています。これらの特徴は、そのいずれかが過不足となっても健康に害を及ぼしていまいます。%e9%9d%92%e5%b1%b14

足もとは体の下方にあって陰に属しますが、寒は陰邪です。ゆえに、足もとは寒邪が侵入する主な経路の一つであり、これが「寒は足もとから生まれる」由来です。

人体の内臓器官は、適切な温度条件下でのみ、正常な生理機能を維持できるということがすでに現代医学で解き明かされています。もし、足もとの温度が低い場合、脚部の血管が収縮して血流不暢を引き起こし、血液循環を滞らせてしまいます、そして、全身が寒さを感じやすくなってしまうのです。ですから、体を温めるよりも、まずは足もとから温める方が大切なのです。足もとが暖かくなれば、全身も自然に暖かくなります。

足もとは「第2の心臓」とも言われます。足もとには、人体の内臓と相応するたくさんの反射区があります。足もとが冷えると、人体にある多くの器官に悪い影響を及ぼします。

人体の生理的特徴から見ると、人体の総血液量はその50%が下肢に集中しています。それゆえ、下肢が冷えると、両脚に多くある毛細血管が緊縮してしまい、正常な血流量を下がらせる原因となります。

中医には、「十病九寒」という考え方があります。「寒邪(かんじゃ)」は、人体の気血を凝結、阻滞させ、病気を招く原因の一つです。中医臨床では、「寒邪」により引き起こされた病症が多いのです。従って、「寒邪」が足元に侵入すると、熟睡できなくなったり、心臓にも悪い影響を与えたりします。このほか、胃痛の原因や生理不順、生理痛、冷え症、腰背痛、インポテンツなどの症状をもたらすこともあります。

1400年ほど前に、後世の人から『薬王』と呼ばれてきた医薬学家である孫思邈(581-682)の『千金翼方』の中で「足下保温」という科学的な見解が出されており、それは今なお「袪病延年」(病を除き寿命を延ばす)の経験に生かされています。

病は寒中より侵入してきます。針灸は、疏通経絡 、臓腑機能の調和作用に効能があるので、駆寒や万病治療に著しい効果があるのです。