針灸で治す糖尿病
糖尿病は、よくみられる代謝内分泌疾病の一種であり、主に多飲、多食、多尿、痩せる、尿糖あるいは血糖が増えるなどの典型的な臨床症状がみられます。
糖尿病には大きく分けて以下の二つがあります。
- インスリン依存症糖尿病(IDDM)
- インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)
「インスリン依存症」が小児に多く発症しているのに対し、「インスリン非依存型」は成人型とも言われ、成人に多発しているのが特徴です。日本では近年になって急増しており、その患者数は600万人以上とも言われています。日本の総人口を1億2000万人とすると、20人に1人は糖尿病にかかっているという試算になります。驚くべきことに、40歳以上に限るとなんと10人に1人は糖尿病であるという驚異的な数字が出ています。
中国医学では、古来より糖尿病は「消渇症」と呼ばれてきました。「消」は痩せる、「渇」は口が渇くことを意味し、その典型的な症状は多食・多飲・多尿・痩せるなどとなります。
糖尿病の原因
- (1)飲食の不摂生
- 油分の多い食物や甘味、香辛料の多食、あるいはお酒の飲みすぎによって消化器官が損傷され、その消化吸収作用が失調すると食物や水液が停滞します。 停滞物は、濃縮すると熱を生じて湿熱になります。その湿熱は、人体が要する水液の調和を乱すだけではなく、口やのどが乾燥する症状が現れて水を欲しがるようになります。
- (2)情志失調
- 怒ることやストレス、憂鬱、悲哀など感情の起伏が原因で肝気鬱結します。鬱した気は、長く停滞すればするほど熱を生じ、人体の上部に上昇していきます(目が充血する、イライラする、怒りやすくなる、頭痛、不眠など)。偏盛した熱は、陰液を消耗して体内の水分不足を引き起こすため、その結果口が乾くようになります。頭脳労働者方やストレスの多い管理職などに糖尿病患者が多いのは、そのように緊張した精神状態が体内に変化を引き起こすこととなります。このように、情志失調は病気を引き起こす重要な要因なのです。
- (3)腎虚
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- 先天性(遺伝)による精の不足
- 性生活の不摂生による精の消耗
- 過労、慢性疾患、重病による腎虚の消耗
主に、上記3点のような原因によって腎気を消耗した結果、腎が衰弱化して水液の代謝機能を失い、摂取した水分はすべて小便になって体外に出てしまいます(頻尿)。また、腎が熱を帯びるために体が熱(ほて)り、口や喉が渇きます。
糖尿病治療の基本は食事と運動です。その基本は同じですが、中国には長い歴史を有する独自の治療法があります。その治療法とは、薬膳を中心とした食事と心臓に負担の少ない気功などの運動です。晋の時代(265~426)、皇甫謐の一つである『針灸甲乙経』の中で糖尿病治療に関する記述があり、その著作によると、ツボは四肢に分布しているほか、背部膀胱経の経穴にも分布しています。また、『千金要方』には、数多くの灸法が記載されており、糖尿病に対して早期に治療するように強調しています。文献によると、糖尿病治療に最も効果があるのが針灸であり、その効果は90%にも達しています。数千年来にわたる知見の蓄積と実践により、針灸はインスリンβ細胞の回復を直接的に促進するだけではなく、インスリンの分泌機能を調整によって血糖を下げ、症状を改善するので糖尿病に治療効果があるのです。